2016/01/07

2016年、何事にも自信過剰は禁物

新年あけまして、おめでとうございます。
アムネスティ日本 事務局長の若林です。

今年は、アムネスティ・インターナショナルが設立されて55周年の節目にあたります。我々としても、より存在感のある組織を目指し、新たな飛躍の年にしたいと思っています。本年も何卒よろしくお願いいたします。


最近、日本の文化や伝統技術、勤勉さ、質の高いサービス、寿司などの日本食、外国からの旅行客増など、日本のここがスゴ~イといった論調のテレビ番組や報道が多い。オリンピック招致を成し遂げ、株価も一定程度上がり、日本はまた自信を取り戻しつつある感じがする(調子に乗りすぎではと、チョッと心配)。

80年代にも、経済を中心に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」に代表されるように、自信過剰で、鼻高だった時期があった。しかし90年代に入ると一転して鼻をへし折られた。すなわちバブルが崩壊し、その後は「失われた10年」と言われたように、自信喪失の時期が最近まで長く続いたのである。
 
1980年、死刑廃止のための署名活動

日本人は、日本や日本人に対する意識として、何と浮き沈みが激しい気質なのだろうか。結局、この30年間、日本が世界と比べて、本質的に大きな変化を遂げたわけではない。日本人は、海外との比較で右往左往するのではなく、もっと「日本」を知り、謙虚に日本の良さ、悪さを認識しておくべきではないかと思うところである。

一方で人権状況をみると、日本は一貫して自信過剰ではなかろうか。海外から見た日本と、内から見た日本のギャップは大きく、総じて日本人は、日本では人権は守られて問題はないと思っているというのが私の印象である。最近では、2013年に国連のある委員会で、当時の人権人道大使は、「日本は世界一の人権先進国」だと言い放って、出席者の失笑を買ったことは記憶に新しい。

レバノンの難民キャンプ

例えば、日本は1981年に難民条約を批准しながら、難民認定などで、国際的な責任を果たしているとは言いがたい。世界が難民問題で揺れているにもかかわらず、2014年には5千人が難民申請をし、認定されたのはわずか11人である。また国連からは、国内人権機関の未設置、代用監獄などの刑事司法制度、死刑制度の廃止、ヘイトスピーチへの対応など様々な問題点が指摘されながら、ほとんど改善されてない。「慰安婦問題」も、その一つである。

実は自らの姿を客観的に見ることは簡単ではない。そうであれば、人権問題についても、国連やNGOの意見に耳を傾け、自ら国際基準等と照らし合わせて調査し、謙虚に正すべきところは正す姿勢が重要だ。「慰安婦問題」でも、日韓の政府合意で解決したと思ったら大間違いだ。最終的には当事者である被害者の方がたの納得感が最も重要である。この問題解決に際しても、自信過剰で自らの姿が見えず、当事者不在で人権問題の視点を間違えている証左ではなかろうか。何事にも自信過剰は禁物だ。


アムネスティ・インターナショナル日本事務局長 若林秀樹 


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