今日は、全国スピーキングツアー2015「自分らしい性を生きる~LGBTIの『私』が命をかける理由~」のゲストとして来日したファドツァイ・ミュパルツァさんと、私がファドツァイさんと過ごした日々のことを書かせていただきます。
アムネスティ日本では、世界のさまざまな人権課題を日本の人びとに伝えるために、2年に一度、全国スピーキングツアーを行っています。海外から活動家や人権侵害の被害者を招き、彼らに自身の取り組みや経験について全国各地で講演してもらうという企画です。
今年は、10月1日〜10月22日にかけて、南アフリカからLGBTI活動家のファドツァイ・ミュパルツァさんが来日し、全国7カ所を巡りました。
全国スピーキングツアー2015のゲスト、
ファドツァイ・ミュパルツァさん
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「LGBTI」
最近、ニュースの報道などでもよく使われるようになったこの言葉。みなさんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
これは、下記の頭文字をとった言葉です。
L : レズビアン(性的指向が女性に向く女性)
G : ゲイ(性的指向が男性に向く男性)
B : バイセクシュアル (性的指向に男女の区別がない人)
T : トランスジェンダー(生物学的・社会的性別とは一致しない、または囚われない生き方を選ぶ人。性同一障がいの方を含むこともある)
I : インターセックス(性染色体や生殖器の形態等が典型的な性別と断定しにくい人)
「性」の枠や感じ方などが、多数派が当たり前と考えている“常識”と違う。
ただそれだけで、差別され、理不尽な暴力を受ける人びとが世界中にいます。ファドツァイさんは、こうした人たちの権利を守るために、アフリカ連合や国連への政策提言や被害者のサポートをしています。
ファドツァイさんが活動する南アフリカは、憲法で性的指向や性自認に基づく差別禁止を明記し、法律で同性婚を認めるなど、世界の中でもLGBTIの人びとを守る法整備が進んでいる国の一つです。
しかし、植民地時代に、西洋からもたらされた思想により、社会・人びとの中に同性愛を嫌悪し、LGBTIの人びとを差別する心が根強く残っています。彼らが街中で差別的な言葉を投げかけられることは日常茶飯時、活動家が殺されたこともあります。ファドツァイさん自身、当事者であり、LGBTI活動家であるという理由から、何度もひどい言葉を投げかけられたといいます。自分や家族に対する脅迫や警察から監視を受けた経験もあります。
私は、こんなファドツァイと、日本滞在中の約一カ月を一緒に過ごしました。各地の講演では、鋭い活動家の眼差しを向け、ファドツァイさんは、穏やかに、でも熱い心で、自身の生い立ちや活動内容、思いについて話していました。
今日は、せっかくなので、私が講演外で見たファドツァイさんの「意外な」一面を紹介したいと思います。
成田空港でお出迎え |
厳しい中で活動しているファドツァイさんとは一体どんな人なのか、私は少し緊張していました。
“Hello”
現れたファドツァイさんは、久しぶりに会う友だちに挨拶する感じ。想像したよりもフレンドリーな印象に、心の緊張もほぐされました。「フライトは長くて、とても疲れた」といいながら喫煙室に向かう姿は、大股でゆったりし、気負いのない様子です。
そしてここから、怒涛の日々が始まります。
翌日には新聞社の取材、アムネスティ事務所での交流会にはじまり、間髪いれずに講演や企業向けセミナーの毎日!ファドツァイさんは、苦手なコーヒーで眠気を覚ましながら、超ハードスケジュールをこなしていました。
そんな中、観光にも行きました。
ファドツァイさんは実は日本のアニメが大好き!秋葉原のアニメショップへ買い物にいきました。若者カルチャーに興味を持っていて、プリクラも一緒に撮りました。日本の高機能なプリクラ機にとても驚いていて、目がアニメのようにクリクリしたプリクラを見て、大笑いしていました(笑)。
ファドツァイさんと一緒に撮ったプリクラ
ファドツァイさんはどこにいても、誰を目の前にしても、常に相手と同じ目線で話をなさる人でした。「私は活動家です」と威張ることなく、ただ「ファドツァイ・ミュパルツァ」という一人の人間として、私そして日本の人たちと接していました。
「私は私でありたい。
自分が何者であるかについて、一つの枠に当てはめるようなことはしたくない」
これは、ファドツァイさんとの会話の中で、私が最も印象に残った言葉です。
いったい世界でどれ程の人が、「私は私である」と言えるでしょうか。
そのために、自分であるために、どれほどの人が長く厳しい道のりを歩んでいるのでしょうか。この言葉は、人権を考えるとき、大きなヒントになるのかも、と思いました。
私は、ファドツァイさんに出会ったことで、「多様な人と関わり、多様な考えを知りたい」という思いがさらに強くなりました。ファドツァイさんと出会った多くの人が同じように思ったのではないでしょうか。
ファドツァイさん!ありがとうございます。またお会いできますように。
ファドツァイさんとアムネスティスタッフのみなさん
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萩原
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