【罪を犯していないのに死刑?】
えん罪で、自分が逮捕されるなんて、他人事だと思っていませんか?
ましてや、えん罪で死刑になるなんて、想像もつかないのではないでしょうか?
でも、これは誰にでも起こり得るのです。
記憶に新しいところでは、PC遠隔操作事件で4人が逮捕され、2人が嘘の自白をしました。
また、「障害者郵便制度悪用事件」では、村木厚子さん(現厚生労働省次官)が逮捕され、後に検事がデータを改ざんしたことが明らかになりました。
さかのぼれば、1980年代には、4人もの死刑囚が最終的に無罪で釈放されています。
【アムネスティ日本は、この「冤罪と死刑」とテーマに、2回のイベントを開催】
第1弾として、6月15日「袴田事件って何?」という題目で袴田事件を取り上げました。
この事件では、3月27日、静岡地方裁判所により、事件の再審開始決定がくだされ、48年間拘束された袴田巌さんが同日釈放されました。 決定書では、何回も「証拠捏造の可能性が高い」と言及されています。
もし無罪が確定しても、死刑執行の恐怖におののき、拘禁された半世紀にわたる時間は取り戻せません。場合によっては、死刑が執行されて、命を失っていたかもしれないのです。
第2弾は、7月5日、映画『約束~名張毒ぶどう酒事件死刑囚の生涯~』を上映し、森達也さん(映画監督)と、この事件の関係者である浜田進士さんをお招きして、講演とトークを行いました。
この映画は、やはりえん罪の可能性の高い「名張毒ぶどう酒事件」をテーマに、奥西勝さんの生涯を映画化したものです。
事件は、昭和36年、三重県名張市のある集落でおきました。懇親会の席で毒物の入ったブドウ酒を飲み、女性5人が亡くなったのです。
奥西さんが自分の「自白」を、誘導や強制によるものだと述べたこと、さらに当時、何の物的証拠も無かったことを理由に、一審では無罪が言い渡されました。
しかし、最終的には死刑が確定しました。
これまで奥西さんは、8回もの再審請求を行っています。奥西さんはご高齢で、医療刑務所におられますが、今なお再審を求めて闘っておられます。
今回上映した映画では、仲代達也さんが奥西さん役、樹木希林さんが奥西さんのお母さん役を演じ、その迫真の演技を通じて、日本の司法制度の問題点を投げかけています。
イベントにお越しくださった浜田さんは、事件当時、ブドウ酒を飲んだお母さんの胎内にいましたが、母子ともに奇跡的に大事には至りませんでした。 彼もまた、未だに解決していない事件の被害者です。
この日は、「いつまでも終わらない」複雑な思いを話していただき、我々が日ごろ気のつかない視点を知ることができました。
【「袴田事件」、「名張毒ぶどう酒事件」は、まだ終わっていない!】
我々は、死刑制度や問題の多い司法制度と共に暮らしており、いつ何時、えん罪に巻き込まれるかわかりません。
関心をもって一緒に司法制度改革に取り組みましょう。
アムネスティ・インターナショナル日本事務局長 若林秀樹
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